(続)エデンの東、アブラ的女性像

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 アメリカ版「戦争と平和」がオードリー・ヘップバーン映画であったように、『エデンの東』はジェームス・ディーン映画になっていますが、一番輝いているのは二人の兄弟を愛したアブラではないだろうか。

 

 もう一度彼女の言葉を引用しておきます。

 「大人になると、他人の間に自分の居場所ができて、自分の大きさができて、形ができる。こっちから出て行くものもあるし、ほかの人から入ってくるものもある」」

 翻訳がいまいち曖昧なのですが、要するに...

 精神的に未熟な者は自己中だけれども、大人になるということは「他者との関係性」において自分の世界を獲得していくことよね、

 ...と、言っているわけです。
 さりげなく話していますが、大変なことを述べていると思います。

 私たちは、自分とは何か、自分の性格はどのようなものであるかということを考えるとき、「他から切り離した自分」というものを分析しようとしますね。

 あなたも、ごく自然にそうするのではないでしょうか?

 しかし15歳にもならないアブラがアレンと付き合って理解したのは、「そのような自己中の考えは、子どもの物語」なのだ、ということです。
 フロンティア開拓時代のアメリカ女性とはいえ、小娘にこんなことは言えないという気はしますが、スタインベックが描くアブラはさっさとよい子のアレンを乗り越えていってしまいます。


 そして、父との確執、母との相克の中で自立していくキャルに対して、

 キャル、「他者との関係性」において自分の世界を獲得していくことよ。あなたは、自分が持ち続けてきた子供の物語の幾ばくかを失うかもしれないけど、大人の世界の現実を受けとめながら、生きていかなければいけないの...

 と、問わず語りをしているわけです。半分は自分を納得させ、他方でキャルに同意を求めている。


 まさに、このブログのサブタイトルである「他者(ひと)とともにあり、(なおかつ)自分らしく生きる、という道を自分の力で歩き始めたわけです。(ちょっと我田引水ですが)


 良好な人間関係というのは、このように決然として自立していくことからしか始まらないのです。


 とくに女性の方
 アブラの次のような台詞をあなた自身が言えるでしょうか?

リー:「突っ返されて、(婚約者の)アロンがあなたを好きでなくなったら?」

アブラ:「賭けね。それでも、私は自分自身でありたい

 すごいな、と思います。

 アメリカ、フロンティア開拓時代は男性原理社会でしたから、女性も男化していましたけれども、すごい、すばらしい。


 我が国の男女問題の根底にあるのが、「相手に嫌われることを恐れて(避けて)、自分の考えや感情を押し殺し、結局最後はそれが破綻する」という必然的なプロセスです。

 特に、日本的な道徳観では、女性が怒りを顕わにすることをはしたない行為だと見る向きがあります。


 しかし、前にも書きましたが、怒りというのは自分が正当に扱われなかった時の、自分を大切にする感情だという面があります。怒るべき時には、怒らなければいけないものです。欧米の女性は、激しく怒りの感情を表に出しますね。


 そういうものを押し殺し、見ないようにしているうちに、二人の間に溝が広がっていく。表面的なもめ事は様々な形で出てくるのですが、実は抑圧された感情が形を変えて出てきている場合がたくさんあるのですね。

 ですから、しっかりと自分の本当の気持ちを直視して、過不足なく相手に伝えていかねばいけない。


 動画の場面で、キャルがアブラの話をはぐらかそうとした時、「キャル、真面目に聞いて!」と、ピシャリと締めています。


 そして最後の章では、現実逃避をはかろうとするキャルに対して、アブラは、「逃げ出していく人と、付き合うことはできないわ」と、厳しく言った。


 これには伏線があります。

 婚約者だったアロンが二人の関係を駄目にして、軍隊に志願する場面。

 軍隊の採用係は、超イケ面のアロンを見て、「恋愛沙汰から逃げ出してきたのか...、そうでなければ自分から逃げ出したいのだろう...」と、値踏みをするくだりがあります。


 それを受けて、このアブラの台詞が生きてくるわけで、スタインベックは計算を尽くしていると思います。


 精神的に未熟な人は、えてして「愛されること」を願います。そうすると「嫌われること」を恐れて、不毛な関係を自ら作ってしまいます。


 15歳のアブラは違う。

 私は私自身でありたい。

 このような生身の私を、大切にしてくれる人を愛したい。


 ...と言っているわけです。


 キャルは否応なしに一人前の男として、成長していくでしょうね。

 自分が自立していかなければ、本当に他者に対して思いやりもできないし、愛することもできないのです。

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